出版

ベストセラーは結果でしかない

「ベストセラー編集者なら、売れる本をつくれるんでしょう?」

よく受ける質問です。答えは、つくれません。本が売れるためには、つくる力と売る力の両輪が必要で、どんなに優秀な編集者にも百発百中はないからです。

企画した本がすべて増刷した年もありました。ランキングトップ10に何冊も同時にランクインしたこともあります。テレビ、ウェブ、新聞、雑誌、ラジオ。ありとあらゆるメディアで取り上げられ、大きな反響を得た年もありました。

けれど実態は、年間で10〜20冊つくるなかの1〜2点がベストセラーになり、それ以外は数万部だったり、なんとか1回重版がかかって面目を保っていたりする、というものでした。「いける」という確信をもって大々的に宣伝し、大部数を刷って大きく書店展開したタイトルが、ランキングにも入らずに絶望する。そんな経験も一度や二度ではありません。

ヒットは構造から生まれる

本が売れない時代に本を売るため、出版社の営業は取次・書店と連携しながら、現場で細かな施策を企画・実施しています。広告代理店も絡みます。広報・PRが懸命に宣伝しています。こうした全体の構造と、それぞれの努力に支えられて、ヒットは偶発的に生まれるものです。

しかし「プロデュース」という抽象的な言葉でくるめば、あたかもその編集者の力だけでベストセラーが生まれたような印象になってしまいます。編集者の仕事は本づくりであり、出版全体のワンパートにすぎません。コンテンツのヒットは、不確実な要素が多く絡む複雑な構造の上に成り立っています。ゆえに100%の再現性はありません。

ロングセラーも同じです。出版社は市場の在庫が消化されることで増刷をします。売れなければロングセラーにはならない。つまりロングセラーとは、一過性で終わらずに長く売れ続けたベストセラーのことです。だからロングセラーを期待するのは、ベストセラーを狙う以上に難しい。

それでも再現できるもの

一方で、出版目的に適った結果を得られるかどうか。この点には再現性があります。なぜなら「本の使い方」でコントロールできるからです。

  • マーケティング目的なら、自社のユーザーになってくれること
  • 採用目的なら、活躍する人材が門戸を叩いてくれること
  • 社員教育目的なら、経営理念の浸透による一体感が醸成されること

明確な目的と計画をもって制作した本は、期待に有り余る成果を出してくれます。ベストセラーを狙うのをやめたとき、はじめて出版は経営の手段になります。

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